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前回に引き続き、vSphere 環境の仮想マシンのバックアップとリストアの方法として、ストレージの機能と連携した手法にフォーカスを当ててお送りします。今回は、「SAN ストレージのスナップショット機能を使いつつ、リストアの粒度を上げる方法」について解説します。

SAN ストレージでリストアの粒度を上げる方法

前回の記事で、SAN ストレージでは、ESX ホストのファイルシステム(VMFS)を使用するため、ストレージ側でファイルの認識ができないとお伝えしました。仮想マシンを構成するファイル群を狙って復旧させることができないとなると、運用には耐えられません。その解決策として、SAN ストレージでリストアの粒度を上げるには、大別すると次の 2 つの方法があります。

  • その 1:VVol データストアを使用する方法
  • その 2:VMFS データストアを使用する方法

まずは、VVol データストアを使用する方法から見てみましょう。

その 1:VVol データストアを使用する方法

従来、VMFS データストアは、LUN(SAN ストレージの最小管理単位)= データストア であるため、ストレージの機能によってリストアをする場合は LUN 単位の管理となり、データストアより細かい粒度でのリストアはできませんでした。そこで登場するのが VVol データストアです。VVol データストアの場合は、1 台の仮想マシンが複数の LUN で構成されているため、LUN = 仮想マシンを構成する領域の一部 となります。

ここで、VMFS データストアと VVol データストアの違いについてもう少し具体的にご説明します。従来の VMFS データストアでは、1 台の仮想マシンは、.vmdk などの複数のファイルで構成されていました(図 1)。一方、VVol データストアでは、それらのファイルが LUN に置き換わったと理解していただくとわかりやすいかもしれません。

VMFS データストア ー 仮想マシンを構成するファイル群のイメージ

図 1:VMFS データストア ー 仮想マシンを構成するファイル群

1 台の仮想マシンが複数の LUN から構成されているということは、すなわち、LUN の集合体のスナップショットを使ってリストアすることで、特定の仮想マシンを狙った復旧が可能になるということです。ここまでできれば、その仮想マシンの中のファイルを取り出すことは容易です。

VVol データストアをピュア・ストレージで構築するとどうなるかについては、「Virtual Volume(VVol)で仮想マシンストレージ管理」のページに詳しく記載されていますので、ぜひご覧ください。この Web ページの内容は、ピュア・ストレージ米国本社のコーディ・ホスターマン(Cody Hosterman)のブログがベースとなっています。

残念なことに VVol データストアは普及していない

ところが残念なことに、VVol データストアはあまり普及していません。私はストレージ業界に長くおりますが、VVol データストアで運用されているお客様にお会いしたことがありません。ストレージメーカーにいる我々にとっては非常に有効な概念をもつ VVol ですが、VMware のナレッジベース(2112039)に記載されているように、多くの制限があることも事実です。また、これはあくまでも私個人の意見としてですが、VMware 社自身が、同じくストレージ関連の技術である「vSAN」により力を入れているように見受けられ、そのことも VVol の普及が進まない原因となっているのではないかと推察しています。

VVol データストアでサーバ仮想環境を構築してリストアの粒度を上げることは、技術的には可能ですが、世の中がその方向に向かっていないため、現実的な方法ではないように思います。

上記のナレッジベースの他にも、VMware 社のサイトに VVol の説明や留意点が書かれていますので、参考になさってください。

ではどうすればよいのか

SAN ストレージでリストアの粒度を上げる方法その 2 は、VMFS データストアを使用する方法です。こちらも原理的には  VVol データストアを使用した場合と同様ですが、「お金はかからないが面倒な方法」と、「お金はかかるが簡単な方法」があります。次回はこれらの方法について解説します。お楽しみに!

シリーズ「vSphere 環境でのバックアップとリストア」

vSphere 環境でのバックアップとリストア 第 1 回