image_pdfimage_print

前回の「今さら聞けないフラッシュって?― 第 1 回」では、フラッシュメモリの概要について触れました。第 2 回の今回は、エンタープライズ向けのストレージでフラッシュを利用する際の一般的な懸念事項を挙げてみようと思います。

一般的に、SSD に対する不安点として以下のような事柄をよく聞きます。

  1. 書き込み寿命がある
  2. GB 単価が高い
  3. 書き込み処理が苦手

これらについて、1 つずつ解説します。

1.書き込み寿命がある

SSD は HDD より寿命が長いと言われています。 もちろん寿命は使用時間(連続稼働時間)などにも関係していますが、特に書き込み回数に影響されます。前回も触れましたが、SSD には書き換え数の上限があります。

フラッシュの種類
SLC
eMLC
cMLC
TLC
3D-TLC
ビット数/セル 1 2 2 3 3
書き換え回数(概数) 100万回 1万回 3,000回 1,000回 3,500回
コスト/GB $$$$$ $$$$ $$$ $$ $

書き換え限度回数が存在する媒体においては、その使用寿命を延ばすため、書き込む場所が集中しないように平準化を行う「ウェアレベリング」という手法が用いられます。ただし、一般的なオールフラッシュストレージでは、ウェアレベリングは SSD コントローラにより処理されるため、SSD 単体でしか書き込み回数を平準化できません。

図 1 –  一般的なオールフラッシュストレージ

また、後述の「書き込み処理が苦手」にも関係しますが、書き込み中に読み込み処理などの I/O がバッティングした際、遅延が一気に上昇してしまいます。上図の構成では SSD コントローラが各 SSD 単位で I/O を分散することになります。

2.GB 単価が高い

NAND フラッシュの大容量化とそれに伴う容量単価の下落で、普及期を迎えたフラッシュですが、前述の表のとおり、コンシューマ向けとエンタープライズ向けでは、耐久度(書き換え回数)に比例して GB 単価に大きな差が生じます。例えば、エンタープライズ向けの SLC を選択した場合には、製品コストに大きな影響が出ます。

3.書き込み処理が苦手

フラッシュは書き込みが苦手なデバイスであると言われます。前回の「SSDとは?」のセクションで SSD の構造を見ていただきましたが、フラッシュの場合、1 ビットずつディスクに書き込んでいく磁気ディスクとは異なり、読み・書きは「ページ」単位、削除は「ブロック」単位で行われます。ここで、書き込み処理が苦手とされるデータの上書きが行われる際の動きを見てみましょう。

図 2 – NANDは上書きが苦手なデバイス

上図に示すように、データを上書きする場合には、ブロック単位でデータを一旦退避して該当ブロック上のデータを消去し、データを書き戻すという処理が発生します。ワーストケースでは、例えば 1 MB のブロックに対して 4 KB のデータを上書きするのに、1 MB の書き込みが発生してしまいます。I/O 処理が多くなると、その分フラッシュメディアの劣化にもつながります。

特に、SSD が使い込まれた状態の場合では、上記のように SSD 内部でデータを退避させて、入れ替えながら書き込みを実施する動作が頻繁に行われるため、無駄な書き込みが増え、性能が不安定になる原因となります。

つまり、従来型ストレージのように 4 KB 単位でフラッシュメディアに書き込みを行った場合には、非常に非効率な書き込みとなり、性能書き込み寿命に大きな影響を及ぼしてしまいます。

図 3 – 従来型ストレージでNAND を利用した場合

以上のように、SSD は HDD に比べて非常に高速である一方、留意すべき点もあります。次回は、FlashArray がどのようにこれらの課題を解決し、お客様にとって使いやすく、壊れにくいストレージを提供しているかについてご紹介いたします。