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シニアシステムズエンジニアの澤藤です。今回ご紹介する記事は、テクニカルマーケティングエンジニアリング Van Phan(ヴァン・ファン)による「FlashArray//Mから //X への無停止アップグレード」です。


FlashArray の主要機能のひとつとして、ソフトウェアとハードウェアの無停止アップグレード(NDU)があります。ピュア・ストレージはネットプロモータースコア(NPS)において高評価を受けていますが、その背景には、ピュア・ストレージの優れたサポートチームが全面的に支援する上質なサポートと、ストレスのないアップグレードの提供という実績があります。

「どのベンダーも同じように NDU を掲げている。ピュア・ストレージの NDU は何が違うの?ソフトウェアなら可能かもしれないが、ハードウェアでは難しいのでは?」と懐疑的に考える方もいらっしゃるでしょう。しかし、ちょっと待ってください。我々は単に既存のストレージアレイに容量やコントローラを追加することを言っているのではありません。私たちが提供する NDU は、データがオンラインでアクセス可能で、フルパフォーマンスで稼働している状態で、製品ファミリーや世代に関係なく、既存のコントローラから他のコントローラへのインプレースアップグレードを実現する、他社には真似のできないものです。

ピュア・ストレージの製品は、Evergreen™ Storage サブスクリプションを念頭に設計されています。NDU 機能は最初からアレイに組み込まれており、Evergreen Storage サブスクリプションに最適化されています。私たちは、Evergreen Storage を通じてお客様のストレージへの投資を保護し、ピュア・ストレージのソフトウェアとハードウェアのイノベーションを継続的に提供します。

他社のハードウェア NDU

他のストレージベンダーが提供する NDU は、新しいストレージアレイを追加し、移行ツールを使用してデータを移行するものです。これは NDU ではなく、むしろデータ移行と呼ぶべきものでしょう。 データ移行を行うときは、静的なデータだけを移動するわけではありません。絶えず変化するデータを移動しつつ、そのデータに密接に関係しているソリューションやアプリケーションが影響を受けないようにしなければなりません。このようなアップグレードでは、大々的なアップグレード計画の策定や、データ移行のための高額なプロフェッショナルサービスが必要になります。さらに、移行作業には少なくとも数週間、場合によっては数か月を要することも珍しくありません。実際にどのような作業が行われるかを見ていきましょう。

まず、ハードウェア NDU を実行する前に、データセンター内に新しいハードウェア用の設置スペースと電力を確保しなければなりません。新しいアレイハードウェアを接続するための物理イーサネットポートやファイバチャネルポート、イーサネットケーブルやファイバチャネルケーブルを用意して配線、接続します。次に、ネットワーク接続やファイバチャネルゾーニングを構成するという面倒な作業を済ませ、物理的な作業が完了したら移行ツールをインストールして設定します。また、移行ツール、ホスト OS、MPIO ドライバの設定に伴い、ホストの再起動が必要になる場合があります。さらに、これらを実行する前に、全てのハードウェア層とソフトウェア層で互換性があることを確認する必要があります。データ移行プロジェクトに長期間かかることがあるのはこのためです。同一のストレージベンダーのハードウェア間のアップグレードでも同様です。そして、移行が完了した後も、古いアレイのゾーン解除、不要になったケーブルやラックの撤去作業などが必要です。

ピュア・ストレージのハードウェア NDU

NDU の概念はピュア・ストレージにとって不可欠な要素であり、FlashArray の DNA として全ての製品世代に引き継がれているものです。何年も前のブログ記事(英語)でもそのことが言及されています。FlashArray コントローラは完全にステートレスになるように設計されているため、データの整合性は物理コントローラに依存しません。ホスト I/O 書き込みデータは、実際には FlashArray コントローラに格納されているのではなく、コントローラから物理的に切り離されている NV-RAM デバイスに格納されています。FlashArray のアーキテクチャと、動的コントローラのフェイルオーバーを処理する Purity オペレーティング環境ソフトウェアを組み合わせることで、コントローラを完全に透過的にすることができます。これにより、ホストは NDU 実行中でも影響を受けずに I/O を続行できます。さらに、コントローラのアップグレード中やアップグレード後に、再ゾーニングなどのユーザーが介入する作業は必要ありません。Purity オペレーティング環境ソフトウェアは、IP と WWN を元のコントローラから新しいコントローラに転送することでこれを処理します。コントローラの FC ポートが物理的に置き換わっていても、ファイバチャネルスイッチは同じ WWN を認識します。ホスト側で認識される唯一の変化は、MPIO パスフェイルオーバーだけです。

次世代の FlashArray のハードウェア設計においても、互換性を確保することが初期設計の段階から考慮されています。FlashArray のパフォーマンス、効率、可用性の向上だけを意図するのでなく、NVMe のような主要なテクノロジーの進化に直面しても NDU が支障なく実行できることを念頭に置いています。例えば、FlashArray//M の開発においては、私たちは NV-RAM デバイスのためにアレイ内の NVMe を利用し、また、次世代の FlashArray//X に備えて SAS と NVMe の両方が利用可能なコンポーネントを用いてシャーシを設計しました。2018 年に発表した新しい FlashArray//X ファミリーにおいても、データを移行する手間をかけずに NDU を実行できるという伝統を守り続けています。ピュア・ストレージの NDU では、FlashArray のごく初期の製品である FA-400 から最新の //XR2 まで、複数の製品世代間におけるアップグレードも可能となっています。

//M または //X70R1 をご使用中のお客様は、//XR2 で NDU をより簡単に行うことができます。 //M、//XR1、//XR2 は全て同じ NVMe 対応シャーシ上に配置されているため、単純な交換作業で済みます。追加の物理ラックスペースや電力設備は必要ありません。では、//M から //XR2 への NDU を例に挙げて実際の手順を見てみましょう。

以下の例は、2 つの SAS ドライブシェルフを備えた FlashArray //M です。

  1. //M のプライマリコントローラ(この図の場合:Controller 1)が、全てのホスト I/O を処理しているので、まずはじめにセカンダリコントローラー(この図の場合:Controller 0)をシャットダウンします。ホストとドライブシェルフのケーブルを取り外し、//M Controller 0 を取り出します。
  2. //XR2 Controller 0 を新たに追加し、ホストとドライブシェルフのケーブルを //XR2 Controller 0 に接続し直します。
  3. //M Controller 1 をシャットダウンします。これにより、//XR2 Controller 0 が、全てのホスト I/O を処理するプライマリコントローラになります。次に、ホストとドライブシェルフのケーブルを取り外し、//M Controller 1 を取り出します。
  4. //XR2 Controller 1 を新たに追加し、ホストとドライブシェルフのケーブルを //XR2 Controller 1 に接続し直します。

NVMe 拡張とメディア交換

上記で説明した //M から //XR2 への FlashArray コントローラの NDU プロセスは、完全 NVMe 対応です。前述のように、FlashArray //M 以降のシャーシは SAS と NVMe の両方に対応しています。そのため、//XR2 のお客様は、SATA フラッシュモジュールを使用し続けることも、必要に応じてシャーシに NVMe DirectFlash™ モジュールを追加することも可能です。拡張のために、//XR2 コントローラには、SAS シェルフ接続用の SAS HBA、または DirectFlash シェルフ接続用の 50 Gb イーサネット HBA のどちらも搭載が可能です。

オール NVMe アレイを最大限に活用するためには、メディア交換を検討することをお勧めします。ピュア・ストレージが採用している既存のプロセスを活用することで、SATA フラッシュモジュールを NVMe DirectFlash モジュールに交換し、簡単に容量統合を実現できます。交換プロセスは、メディア間でデータを再配置するだけです。では、実際の手順を見てみましょう。

以下の例は、既にコントローラの NDU を実施した FlashArray ですが、シャーシには SATA フラッシュモジュールがあり、SAS ドライブシェルフも接続された状態です。

  1. DirectFlash シェルフを追加します。DirectFlash シェルフ接続に対応した 50 Gb イーサネット HBA を介して、新しい DirectFlash シェルフを FlashArray に接続するだけです。
  2. シャーシ内の SATA フラッシュモジュールからデータを退避します。
  3. データの退避が完了したら、SATA フラッシュモジュールを NVMe DirectFlash モジュールと物理的に交換します。
  4. SAS シェルフについても同様の退避作業を行います。

  1. 避難が完了したら SAS シェルフを取り外します。これで、メディア変換は完了です。

他社の NDU との違い

他のストレージベンダーでも同様のインプレース NDU を提供していると思われるかもしれません。しかし、全ての NDU が同じというわけではありません。ほとんどのベンダーは、同じ世代間でのアップグレードだけに対応しており、異なるフラッシュ規格の混在を許容できることは稀です。また、多くの場合、パフォーマンスにも影響があります。アップグレードは慎重に管理し、少なくとも運用に影響を与えないように実行する必要があります。次世代あるいは異なる世代間での NDU は、他のベンダーではまず現実的ではないと言ってよいでしょう。たとえ実現可能であったとしても、作業は複雑でありパフォーマンスにも影響を与えます。そのことがお客様のストレージの近代化を遅らせる要因となり、多様に変化するビジネスに迅速に対応することが困難になるでしょう。

ピュア・ストレージには、Evergreen Storage サブスクリプションという利点もあります。Evergreen Storage サブスクリプションは、この NDU テクノロジーと、ストレージ投資の保護を可能にするビジネスプログラムとを組み合わせたものです。Evergreen Gold サブスクリプションでは、Free Every Three サービスにより、3 年ごとにコントローラを無償アップグレードできます。これにより、最低でも 3 年ごとにコントローラを最新の状態に保つことができ、NDU も利用可能です。また、Upgrade Flex サービスを利用し、必要に応じて古いコントローラを新しいコントローラに交換できます。この場合も NDU を利用できます。さらに、容量統合プログラム Capacity Consolidation により、フラッシュへの投資が保護されます。より新しい高密度のフラッシュにデータを統合することで容量増加を管理します。下取りサービスも利用可能です。全ての Evergreen Storage サブスクリプションには、アップグレードや将来リリースされるアレイの新機能を含め、必要な Purity ソフトウェアが全てバンドルされています。繰り返しになりますが、これらのアップグレードは、世代を超えるものであっても全て、ピュア・ストレージの NDU テクノロジーを介して行われます。お客様は、常に最新で近代的なストレージ環境を低コストで利用できます。


澤藤からのコメント

ピュア・ストレージは、時間の経過とともにストレージの性能を向上させ、コストを削減することで、比類のない IT の柔軟性をご提供いたします。

また、プリンシパルシステムズエンジニアの岩本による実機を使った NDU デモの動画がありますので、ぜひご参照ください。ピュア・ストレージのビジョンをより深くご理解いただけると思います。

弊社製品に関してご興味があれば、ぜひ担当の営業 / SE やお付き合いのある販売パートナー様にお知らせください。より具体的にご説明・ご提案させていただきます。お問い合わせページからのご連絡もお待ちしております!

英語版:Non-Disruptive UpGrades: FlashArray//M to //X with NVMe

参考情報

ピュア・ストレージ・ジャパンの最新動画はこちらからご覧いただけます。