前回ご紹介した Portworx® PX-Backup 2.0 のリリースと同日の 2021年7月31日に、Portworx® Enterprise 2.8 がリリースされました。ピュア・ストレージは、昨年 10 月の Portworx 買収以来、製品ラインの統合に注力してまいりました。Portworx Enterprise 2.8 は、最初のリリースとなります。
さっそく、このリリースでアップデートされた機能の概要をご紹介します。
- FlashArray と FlashBlade オーケストレーションの自動化
Portworx から FlashArray と FlashBlade でのダイナミック・プロビジョニングをサポート。これにより、ピュア・ストレージのアレイが、Kubernetes に対する最もシンプルなストレージ・ソリューションとなっています。 - Pure1 コールホーム機能とエンドツーエンド・サポート
強化されたセキュアな Pure1 コールホーム機能により、Portworx とピュアのストレージ・アレイの両方でプロアクティブなサポートを提供します。 - VMware Tanzu サポート
CSI を介した Tanzu ストレージ・オプションの管理を含む、VMware Tanzu の完全サポート。vSAN、VVOL、または VMware に接続されたストレージをサポートします。 - Pure1 SaaS & モバイル端末からの管理
ピュア・ストレージの SaaS 管理ソリューションである Pure1 を活用して Kubernetes インフラストラクチャ全体を可視化し、サポートからのアラートをモバイル・アプリに送信します。 - CSI 1.4 サポート
CSI に対する Portworx のサポートは進化を続けており、現在最新版である CSI 1.4 および CSI Raw Block をサポートしました。
本ブログでは、Portworx Enterprise 2.8 においてメインの拡張となる「FlashArray と FlashBlade オーケストレーションの自動化」、「Pure1 との統合」と、バージョン 2.8 のインストール手順および留意点をご紹介します。
FlashArray と FlashBlade オーケストレーションの自動化
ダイナミック・プロビジョニング
Portworx Enterprise 2.8 では、FlashArray と FlashBlade からのボリュームのダイナミック・プロビジョニングに対応しました。ダイナミック・プロビジョニングに対応する以前には、次のような手順でボリュームを割り当てていました。
- バックエンドのストレージ・アレイ(FlashArray または FlashBlade)の GUI でボリュームを作成する(例: 1 TB のボリューム)。
- FlashArray または FlashBlade の GUI で、作成したボリュームを各ワーカー・ノードに割り当てる。
- ボリュームが割り当てられたワーカー・ノードを Kubernetes クラスタに追加(Join)する。
- Join されたワーカー・ノードに紐づくボリュームが、Portworx のプールに自動的に組み込まれる(例:1 TB がプールに追加される)。
- コンテナから必要なサイズ(例: 200 GB)を指定すると、Portworx のプールからボリュームを割り当てられるようになる。
上記のオペレーションには、次のような課題がありました。
- 各ワーカー・ノードに対して、一定の余裕を持ったサイズ(例:1 TB)のボリュームを特定のアレイから事前に割り当てる必要がある。
- ワーカー・ノードを追加する際に、コンテナ開発者またはストレージ管理者が、FlashArray または FlashBlade の GUI を使って該当ワーカー・ノードに一定サイズのボリュームを割り当てる必要がある。
- ワーカー・ノードがダウンした場合には、そこに紐付くボリュームや未割り当ての領域を含むサイズの容量が利用できなくなる。
これらの課題を解決するために、ピュア・ストレージの Pure Service Orchestrator(PSO)という CSI(コンテナ・ストレージ・インターフェース)の中で以前から提供していたダイナミック・プロビジョング機能が、Portworx でも利用可能になりました。
このダイナミック・プロビジョングでは、コンテナ側からブロックまたはファイルおよび必要なボリューム・サイズを指定するだけで、バックエンドのアレイを意識することなく、負荷状況から最適なストレージが自動的に割り当てられます。
Portworx のデータ保護機能を FlashArray で利用
FlashArray のボリュームは、Portworx が管理するプールでまとめて管理されます。そのため、Portworx のボリューム・レプリケーションや、コンテナ粒度のバックアップ、ディザスタ・リカバリ(DR)といった機能をそのまま使用できるようになります。
一方で、FlashArray が持つ重複排除や圧縮、暗号化、RAID-3D、Evergreen といった特長を Portworx 側も享受できます。
例えば、次の図のように、2 つのボリュームのレプリケーション(VOL1 と VOL2)を作成した場合に、通常、コンテナは VOL1 を参照していますが、サーバーがダウンすると、Portworx は Kubernetes のスケジューラと連携してコンテナを VOL2 に紐づくサーバーに移動させます。この場合、通常であれば VOL1 と VOL2 の 2 つ分の容量が必要です。しかし、物理レイヤーが FlashArray であれば、削減率の高い重複排除で実際のデータ容量を効率よく格納し、かつ、RAID-3D(RAID 6 相当)でデータの可用性を担保します。
Pure1 との統合
本リリースのもう1つの主要なポイントとして、ピュア・ストレージが無償で提供する SaaS 型サポート・システムとの統合があります。クラウドベースの管理ツール Pure1 は、これまで、FlashArray や FlashBlade など 1 万台以上のハードウェアのモニタリングとサポートでご利用いただいていましたが、この度、Portworx のクラスタからもテレメトリ情報を定期的に送信し、Pure1 の GUI 上でお客様のクラスタ状態を管理できるようになりました。
エンドツーエンド・サポート では、双方向認証を使用して HTTPS 経由で保護された通信を行います。お客様によって RemoteAssist セッションが開始され、SSH over HTTPs を介して暗号化されます。ピュア・ストレージのサポート・スタッフが 24 時間 365 日環境を監視し、サポート・チームはフルスタック・テレメトリにアクセスして問題のトラブルシューティングに役立てます。
これらの情報をもとに、Pure1 上でコンテナとアプリの可視化、一元管理が可能となります。
テレメトリにより Pure1 に送信される内容は、今後も引き続き拡張する予定です。最新情報は、こちらをご参照ください。
また、Pure1 の特長の 1 つである AI を駆使した予測型サポートは、障害があったログから傾向を検知し、フィンガープリントを作成します。以降、他のアレイ・クラスタから送信されてくるログをリアルタイムでスキャンし、問題を事前に検知して対応します。
Portworx Enterprise 2.8 のインストール時の注意点と PVC の作成
ここからは、Portworx Enterprise 2.8 のインストール時の注意点と、FlashArray および FlashBlade のサンプル PVC(PersistentVolumeClaim
)の作成手順をご紹介します。
- 既に Portworx がインストールされている環境では、クリーン・インストールするか、アップデートを行っていただきます。ここでは、一度 Portworx を削除する方法をご紹介します。
123# curl -fsL “https://install.portworx.com/px-wipe” | bash<br> - Portworx Enterprise 2.8 をインストールする前に、FlashArray と FlashBlade の情報が含まれる Secret を作成します。
注:ファイル名は必ずpure.json
としてください。
123{<br> “FlashArrays”: [<br> {<br> “MgmtEndPoint”: “10.229.xxx.xxx”,<br> “APIToken”: “51766735-………-yyyyy-……..”<br> },<br> {<br> “MgmtEndPoint”: “10.229.xxx.xxx”,<br> “APIToken”: “51766735-………-yyyyy-……..”<br> }<br> ],<br> “FlashBlade”: [<br> {<br> “MgmtEndPoint”: “10.229.xxx.xxx”,<br> “APIToken”: “T-51766735-………-yyyyy-……..”,<br> “NFSEndPoint”: “10.229.xxx.yyy”,<br> }<br> ]<br>}<br> kubectl
コマンドで Secret を作成します。
123# kubectl create secret generic px-pure-secret –namespace kube-system –from-file=pure.json- PX-Central から Portworx Enterprise 2.8 のインストールを行います。Portworx のインストールの説明は以前に投稿したブログ「Portworx Enterprise のインストール」をご参照ください。
- 一点、これまでと異なる点として、FlashArray をお使いいただく場合は、「Storage」のセクションで「Cloud」→「FlashArray」を選択し、各ワーカー・ノードに割り当てるストレージのサイズを入力します。割り当てられたストレージは、Portworx のプールとして管理され、アプリケーションからのリクエストに対してダイナミックにボリュームが割り当てられます。
- インストールが完了したら、
StorageClass
およびPersistentVolumeClaim
(PVC)を作成します。以下に、FlashArray、FlashBlade それぞれのサンプルを示します。
FlashArray の場合:Portworx のプールに組み込まれます。
123kind: StorageClass<br>apiVersion: storage.k8s.io/v1<br>metadata:<br> name: portworx–sc<br>provisioner: kubernetes.io/portworx–volume<br>parameters:<br> repl: “1”<br>
123kind: PersistentVolumeClaim<br>apiVersion: v1<br>metadata:<br> name: pvcsc001<br> annotations:<br> volume.beta.kubernetes.io/storage–class: portworx–sc<br>spec:<br> accessModes:<br> – ReadWriteOnce<br> resources:<br> requests:<br> storage: 40Gi<br>FlashBlade の場合:Portworx のプールには組み込まれず、CSI を通したプロビジョニングのみになります。すなわち、I/O は Portowrx のデータ・プレーンを通過せず、直接 FlashBlade と通信します。
123kind: StorageClass<br>apiVersion: storage.k8s.io/v1<br>metadata:<br> name: portworx–pso–fb–v3<br>provisioner: pxd.portworx.com<br>parameters:<br> backend: “pure_file”<br> pure_export_rules: “*(rw)”<br>mountOptions:<br> – nfsvers=3<br> – tcp<br>allowVolumeExpansion: true<br>
123kind: PersistentVolumeClaim<br>apiVersion: v1<br>metadata:<br> name: pure–claim–file–v3<br>spec:<br> accessModes:<br> – ReadWriteOnce<br> resources:<br> requests:<br> storage: 5Gi<br> storageClassName: portworx–pso–fb–v3<br>
以上、Portworx Enterprise 2.8 のリリースについて、主にピュア・ストレージ製品との統合に関する部分についてご紹介しました。後続バージョンでも、特に Pure1 を中心に続々と統合が進められます。今回ご紹介した Portworx Enterprise 2.8 のインストールや PVC の作成に関する詳細は、下記の動画やマニュアルもあわせてご参照ください。
その他の関連リンク
- Portworx リリース・ノート
- Portworx Enterprise 2.8 マニュアル
- FlashArray と Portworx 統合の Deep Dive (ビデオ)
- Tanzu + Portworx(英語版ブログ)
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