激動の時代を迎える自動車業界

自動車業界は大きな変革期を迎えています。自動車メーカー各社は、この変化に乗り遅れないよう、AI 対応のインフラ事業における推進力を必要としています。

Automotive Industry

22分
image_pdfimage_print

かつて自動車業界は、変化に鈍感でテクノロジー的に時代遅れであると考えられていました。しかし、今やそのような 2 世代前の産業ではなくなり、激動の時代を迎えています。特に自動車業界におけるデータ分析の活用は、現在急速に拡大しています。

自動車業界では、あらゆる面で変化が起こっています。

  • 研究開発
  • 向上の生産ライン
  • サプライチェーン
  • 自動/アシスト運転
  • 顧客の購入体験

あらゆるものが AI とデータ解析を中心とするテクノロジーの影響を受けています。

電気自動車のジレンマ

あまりに多くの変化が起こっているため、1 回の投稿ではカバーしきれません。今回は電気自動車(EV)を取り上げることにします。EV についてはコンサルティング会社のマッキンゼーがさまざまな調査研究結果を発表しており、このブログでもそれを参考にしています。

ガソリン車から EV への移行が加速しています。自動車メーカー(OEM)の大半は、2040 年までには EV のみの生産に移行することを予定しており、メーカーによっては、それ以前の移行をめざしています。

マッキンゼーは次のように述べています。

この 10 年間で自動車業界には 4000 億ドル以上の投資が行われ、そのうちの約 1000 億ドルは 2020 年以降のものである。これらの投資は、駆動系の電動化、コネクテッドカー、自動運転テクノロジーに取り組む企業やスタートアップ企業を対象としている。新しい内燃エンジン(ICE)のプラットフォームやモデルへの投資を打ち切る意向を表明している自動車メーカーも存在する。

しかし、問題は採算性です。現在のところ EV 事業は、よくても僅かな利益が出る程度で、多くの場合が赤字です。このような状況で、ROI(投資利益率) に対しては「効率化」の重要性が極めて大きくなります。「効率化」は、市場投入までの時間も左右します。

マッキンゼーは、収益性を高めるための戦略を数多く検討しています。そのほとんどがテクノロジーを基盤としていることは驚くにあたりません。そのような戦略の代表例を以下にご紹介します。

自動車ビジネスはコード・ビジネス

今やほぼ全ての産業がそうであるように、自動車会社もソフトウェア会社になりました。マッキンゼーは、自動車メーカーに対してソフトウェアの重要性を強調し、ソフトウェアを全社的な変革の原動力とするよう提案しています。さらに、次のように述べています。「ソフトウェアは、調達、品質保証、予算作成、販売、アフターサービスなど、バリューチェーン全体に対して大きな影響を及ぼす。経営者は、この影響力を考慮し、アジャイル開発などの新しい開発方法を採用すべきである。」

自動車が組み立てラインで生産されているという私たちの認識から、大きく離れたものになっています。自動車メーカーは、コンテナベースの開発、CI/CDモデル、高性能な分析パイプラインに移行することで、大きな利益を得ることができます。迅速さは常に重要です。しかし、利益率が厳しい場合には、効率が大きな意味を持ちます。コンテナ・ストレージ環境の簡素化と、Kubernetes 向けのプラットフォームの導入が有効です。

上記のようなユースケースでピュア・ストレージがいかに自動車メーカーに貢献できるかについては、ソリューションの概要で詳しく解説しています。

車の購入体験を変える

多くの消費者が従来の車の購入手順に不満を抱いています。私自身もその 1 人です。数年前に「サターン」(残念ながら現在は製造終了)を購入したのですが、理由は、定価が設定されていて、価格交渉が必要なかったからです。すばらしいアイデアです。しかし、この方式はサターンの販売店以外には広がりませんでした。

EV の出現は、自動車業界の転換期を象徴するとともに、販売のありかたを根本的に変える機会をもたらしています。実際に、サターンのような透明性のある価格モデルを採用しようという機運は高まりつつあり、EV はその先頭に立っています。

販売における変革の初期の兆候が、顧客に対する価格の透明性を優先するオンライン販売モデルです。従来の自動車メーカーのうち、EV の生産拡大にコミットする企業が増えるにつれて、 オンライン販売のチャネル拡大とオンライン限定販売へのニーズが高まっています。

価格交渉を必要とせず、完全なオンラインで車を購入しようというものです。さらに、車のメンテナンスもソフトウェアの場合と同様にオンラインで行われるケースが増えてくるかもしれません。

マッキンゼーは次のように述べています。

OTA(Over The Air:無線通信)によるアップデート機能がメンテナンス作業を軽減し、ディーラーにおけるアフターセールスの収益改善が期待できる。新しい車、とりわけ EV では、ソフトウェアと電子部品の割合が増加しており、自動車メーカーによる OTA サービス(ナビゲーションやエンターテイメント・システム、ソフトウェアの無線アップグレード)の提供を可能にしている。これは、新しい車のオーナーが直接ディーラーを訪れる必要性がなくなることを意味する。

これからは、車ではなく、車輪の付いたコンピュータを運転することになります。自動車メーカーは、データ分析を活用した予測型サポートを提供し、部品の故障を予知して警告を発することでレッカー移動を回避するといったことが可能になります。

ピュア・ストレージでは、予測型サポートがお客さまにとってどれだけ有用であるかを実感しています。AI を活用した先進的な予測型サポートは、ストレージ・サービスの中断を未然に防止します。

サービスとしての車(CaaS)

サービスとしての交通手段であるライドシェアは、既に提供されています。では、「車をサービスとして購入する」というアイデアはどうでしょうか?今後、トレンドとして注目されるかもしれません。

EV の所有に関する手間や費用を 1 つの月額料金にまとめることにより、購入者にとって利用しやすく、支払い計画も立てやすい購入モデルを提供できます。

マッキンゼーは次のように述べています。

車両の購入資金の貸し付けから、電力会社との提携による家庭用充電器の設置、商用電源による充電のシームレスな利用まで、全てを月額料金で提供するエンドツーエンドの EV リースやファイナンス・ソリューションの提供機会が増えている。

自動車メーカーは、バッテリー・アズ・ア・サービス(再利用やリサイクルを支援)、タイヤ・アズ・ア・サービス(月額料金で必要に応じて交換)の提供によって、顧客価値を高めることができます。

ピュア・ストレージは、ストレージ・アズ・ア・サービスのパイオニアとして、使用量ベースの購入モデルが多くの業界に最適であることを証明してきました。ストレージの購入ではなく、使用量に応じた SLA の購入を通じて、消費量に応じた請求を受けるというモデルです。このモデルは、ビジネス・サイクルの予測が難しい業界にも、極めて柔軟に対応できます。「アズ・ア・サービス」の購入モデルは、既にオンライン・サービスやソフトウェアに広く浸透しています。今後、自動車や家電などの物理的な製品にも拡大していく可能性があります。

最初から正しく構築する

自動車メーカーが EV に移行する際の課題の 1 つは、既存の工場や生産ラインがガソリン車向けに設計されているという点です。従来のシステムを EV 用に改修すれば、一時しのぎにはなるかもしれません。しかし、より俊敏な競合に対する戦略的優位性を生み出すことはできません。

マッキンゼーは次のように述べています。

ICE の駆動系用の工作機械を製造し続けるだけでは不十分であることを認識し、直ちに戦略的行動を起こすことを厭わない会社は、競合を凌駕し、それぞれのセグメントで優れた業績を達成できるであろう。

ストレージ業界にも同様のことがいえます。フラッシュ・ストレージの需要が高まると、従来型ベンダー各社は身動きのできない状況に陥り、唯一可能であった対応策を講じました。それは、ハードディスク向けに作られた旧型アーキテクチャを改良し、フラッシュ・ドライブをアレイに詰め込むというものでした。

ピュア・ストレージのアレイは、フラッシュメモリ用に設計されているため、従来のソリューションとは根本的に異なります。同様の方法を採用する自動車メーカーは大きな成功を収めるでしょう。

マッキンゼーは、専用の EV プラットフォームこそが将来の方向性であることを多くの自動車メーカーが認識していると述べています。説得力があります。従来のものを改修すれば一時しのぎはできます。しかし、古いプラットフォーム上に新しいソリューションを構築しても最適化することはできません。根本的な違いがあります。初期投資は大きいかもしれません。しかし、EV を前提とした製造プロセスにより、長期的なコスト削減と、より優れた製品の市場投入が可能になります。

アルゴリズムがカギとなる

自動車業界では、EV へのシフトをはじめとして、あらゆる場面で変化が起きており、変化の中心にあるのが、AI、機械学習、分析などのアルゴリズムです。アルゴリズムは、デジタルツイン、車載音声応答システム、スマート充電ステーション、オンライン購入、リモートのサービスやメンテナンスなど、今後登場するであろうあらゆるテクノロジーの根幹をなすものです。アルゴリズムを支えるオペレーション性能は、コンピュートとストレージの組み合わせで決まるため、性能を向上させるには両方が最適化されていなければなりません。従来型の IT インフラでは対応できません。

ピュア・ストレージは、NVIDIA と共同で、アルゴリズム中心のワークロードに最適なフルスタックの AI 対応インフラ・ソリューション AIRI® を開発しました。AIRI は、最高クラスの GPU と高速のファイル/オブジェクト・ストレージの組み合わせによる相乗効果で、自動車業界を急速に発展させるための最適なプラットフォームとなります。

さらに詳しくは、AIRI による自動車ソリューションの概要をご覧ください。

Written By: