はじめに
FlashBlade の 4.5.2 で、ピュア・ストレージらしいスマートな新機能 Zero Move Tiering が実装されました。その名のとおり、データの移動を伴わないティアリング機能です。
従来のティアリングの考え方は、以下のようなものでした。
- ホットデータ:性能を必要とするホットデータは、高速なデバイス(以前は SAS HDD、現在は SSD)に格納
- コールドデータ:性能が不要なコールドデータは、安価なデバイス(NL-SAS / SATA HDD やテープ)に格納
このように、アクセス頻度や重要性に基づいてデータを分類し、ティア別に物理的に異なるデバイスに格納していました。
また、このティアリング方法が自動化されていたとしても、データの移動を伴うという問題がありました。ティアリングが考えられた時代と現在とでは、肥大化するデータ量はもちろん、コールドデータへのアクセス傾向が全く異なります。データはビジネスを成長させる資産であり、コールドデータも含めて再度分析をかけたいケースもあるでしょう。しかし、コールドデータは低速なデバイスに格納されているため、データ量に比例して分析処理は長時間化してしまいます。仮に、コールドデータをホットティアに戻すとしても、その手間と時間に頭を悩ませるでしょう。
そこでピュア・ストレージは、データの移動を伴わないスマートなティアリング機能「Zero Move Tiering」を FlashBlade(以降、FB)向けにリリースしました。本ブログでは、その内容を解説します。
Zero Move Tiering の構成
Zero Move Tiering では、性能に最適化された FB//S シャーシと GB 単価に最適化された EX シャーシ* で 1 つのクラスタが構成されています。Zero Move Tiering を理解していただくために、まずは FB//E についておさらいしましょう。
* EX シャーシ:FB//E で使用されているコンピュートを持たない容量のみのシャーシ。EX シャーシのブレードはコンピュート(CPU、メモリ)を持たず、容量(DFM)のみを搭載。
FB//E のおさらい
現時点(2024 年 12 月)で、FB//S、FB//E ともに最大 10 シャーシ(100 ブレード)までのスケールアウトが可能です。FB//S は、容量に比例して性能(コンピュート)も増大しますが、FB//E は異なります。FB//E では、EC シャーシの 10 ブレードのコンピュートあたり最大で 4 シャーシ(1 EC + 3 EX)分の容量を管理します。さらにスケールアウトさせると、次の 5 シャーシ目は、コンピュートを含む EC シャーシになります。例えば、8 シャーシ構成であれば、2 EC + 6 EX です。
図 2 のとおり、FB//E は FB//S と比較して、コンピュートあたりの最大容量が圧倒的に大きいのがわかります。このように、FB//E は性能のトレードオフとして容量を優先することで、NL-SAS / SATA HDD 並みの GB 単価を実現しています。
Zero Move Tiering のサポート構成
Zero Move Tiering の初期リリース(2024 年 12 月)でサポートされている構成は、以下のとおりです。
- FB//S500 : 37 TB DFM
- EX シャーシ:75 TB DFM
1 DFM あたりのサイズに関しては、まもなく 150 TB DFM のリリースが予定されています。Zero Move Tiering 構成の集約密度も、今後向上させていく予定です。
シャーシ比率 //S500 : EX | 物理容量 (ホット) | 物理容量 (コールド) | 物理容量 (合計) |
---|---|---|---|
1:1 | 1,480 TB | 3,000 TB | 4,480 TB |
1:2 | 1,480 TB | 6,000 TB | 7,480 TB |
2:3 | 2,960 TB | 9,000 TB | 11,960 TB |
2:4 | 2,960 TB | 12,000 TB | 14,960 TB |
Zero Move Tiering のアーキテクチャ
上述のとおり、Zero Move Tiering は、性能特化の FB//S シャーシと、GB 単価の EX シャーシで構成されています。しかし、ホットデータを FB//S シャーシに、コールドデータを EX シャーシに格納するわけではありません。それではホット/コールドを切り替える際に、データの移動が必要になってしまいます。本機能で重要なのは、データの移動を伴わない点です。
FB//S のブレードに搭載される DFM も、FB//E のブレード(EC シャーシ、EX シャーシ)に搭載される DFM も、ハードウェアは同じ QLC NAND の DFM です。FB の性能を決定する最大の要因は、クラスタ内の全ブレードのコンピュート(CPU スペック、メモリ量)の総量と、それらが管理しなければならない容量(QLC NAND DFM)とのバランスになります。よって、FB//S のコンピュート・モジュールから同一シャーシの DFM に I/O するのも、別の EX シャーシの DFM に I/O するのも、I/O 時にコンピュート・モジュールのリソースをどのくらい使用するかでその性能が決まります。
Zero Move Tiering では、FB のこの特性を活用し、以下のアーキテクチャでデータの移動を伴わないティアリングを実装しています。
- ホットデータ: FB//S シャーシの DFM、EX シャーシの DFM のどちらにあっても、コンピュートは高スループットで I/O(図 3 の赤い矢印)
- コールドデータ:コンピュートのリソースを使用せずに I/O(図 3 の青い矢印)
ホットデータ、コールドデータの定義(設定方法)
Zero Move Tiering でのホットデータ、コールドデータの定義は、ユーザーが設定します。
ファイル・システム*/バケット** 単位にホットデータ、コールドデータを設定
図 4 の例では、ファイル・システム A はホットに定義されています。このディレクトリに格納されているファイルへの I/O は、FB のコンピュート・リソースを使用して高スループットでのアクセスが可能です。一方、ファイル・システム B はコールドに設定されています。ホットティアに影響を及ぼさないように、最低限のスループットでのアクセスが可能です。
* FB におけるファイル・システムとは、FB 内に作成されるボリュームのことです。この単位でクライアントにシェア/エクスポートします。例えば、Windows クライアントから見るとフォルダ A = ファイル・システム A、フォルダ B = ファイル・システム B という関係になります。
** リリース時(4.5.2)は、ファイル・システムのみ。オブジェクトは、今後のリリースで対応予定です。4.5.2 では、オブジェクトは常にホットティアです。
まとめ
Zero Move Tiering は、データの移動を伴わないスマートなティアリング機能です。これは、ハードウェアの性能は同一でありながら(例:FB//S も FB//E も QLC の DFM)、性能と GB 単価のバランスを主にソフトウェアの技術力で調整しているピュア・ストレージならではの機能といえます。
今後のブログでは、Zero Move Tiering の GUI / CLI 設定や、運用方法についてご紹介する予定です。
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