はじめに
2023年3月16日、ピュア・ストレージは、FlashBlade ファミリーの新製品として FlashBlade//E を発表しました。
今回は、ピュア・ストレージの製品開発の歴史と製品ポートフォリオを交えて FlashBlade//E の概要を解説します。
FlashBlade//E をリリースするまでの背景
図 1 は、ピュア・ストレージの FlashArray ファミリーと FlashBlade ファミリーを中核とした製品ポートフォリオです。
FlashArray
FlashArray(以降、FA)は、構造化データ向けに最適化されたオールフラッシュ・ストレージです。10 年の歴史を持つ現 FA//X を主とした三大ユースケースは次のとおりです。
- VDI
- サーバ仮想化(VSI)
- データベース
その大きな理由として、次の 2 点が挙げられます。
- 性能要件を HDD で満たそうとすると膨大な本数が必要になること
- データの特性として FA の重複排除 & 圧縮が効きやすいため、ハイブリッド〜 SAS HDD ストレージの GB 単価と同等になること
そして、2019 年に FA//C がリリースされ、重複排除 & 圧縮による削減率の考慮なしで SAS HDD 並みの GB 単価を実現しました。その結果、FA は前述の三大ユースケースの枠を越え、現在では SAS HDD 上で稼働するものなら何でも OK となりました。もちろん、FA//C の重複排除 & 圧縮は FA//X と同様に業界 No.1 の削減率です。圧倒的な TCO も考慮して、NL-SAS(SATA)HDD のリプレースにトライするのも大いにアリです。詳細は、FB//C のブログ連載をご覧ください。
参考:FlashArray//C ブログ連載
FlashBlade
FlashBlade(以降、FB)は、非構造化データ向けに最適化されたオールフラッシュ・ストレージです。現 FB//S の主なユースケースは次のとおりです。
- データレイク
- AI 基盤
- CDN
- 高速なバックアップとリストア
参考:FlashBlade の国内事例
- KDDI 株式会社:FlashArray と FlashBlade がクラウドの I/O 性能向上とデータ分析基盤の簡素化に貢献
- オリンパスの AI 開発促進を支えるピュア・ストレージ
- 沖縄科学技術大学院大学(OIST):FlashBlade 導入により、膨大な研究データへの高速アクセス、シンプルな構成、迅速な解析を実現
- JOCDN:国内最大級の動画配信事業を支える CDN 基盤に FlashBlade を導入
- マネックスグループ:FlashBlade と Veeam の連携によるバックアップ運用の大幅効率化と一元管理
- 日本中央競馬会(JRA):ピュア・ストレージで IT 基盤をオールフラッシュ化
- スクウェア・エニックス:「FlashBlade」を日本初導入、ミッションクリティカルを支える安定性と高スループットを実証
しかし、依然として 90% の非構造化データが HDD に保存されており、特に日本はその傾向が強いといえます。また、非構造化データの量は 2030 年までに 10 倍になると予測されています。この領域はとにかく GB 単価重視であり、非構造化データは肥大化する傾向にあるうえ、高いデータ削減率も期待しにくいため、HDD(主に NL-SAS)のみが今までの選択肢でした。FB//E はここに着目して開発され、リリースされた製品です。GB 単価が同等であれば、オールフラッシュが全てにおいて勝るはずです。
今回の FB//E のリリースによって、前述のユースケースに加えて、現在 SAS HDD 上で稼働するもの、かつ NL-SAS(SATA)HDD 上で稼働するものなら何でも OK となります。なぜなら、FB//E の GB 単価はプレスリリースにも書かれているとおり、0.20 ドル未満(※ 物理容量、3 年間の保守費込み、削減率の考慮なし)であるためです。実際には、実効容量で 5 年間の保守費込み等で計算していくと思いますが、それでもオールフラッシュでありながらここまでの GB 単価を実現できたのは、10 年以上フラッシュの技術と市場を牽引してきたピュア・ストレージならではと自負しています。
このポートフォリオの完成により、かねてからのピュア・ストレージのメッセージである No More HDD を全てのワークロード、ユースケースに適用できるようになりました。
FlashBlade//E の構成
FB の 5U のシャーシには最大 10 ブレード搭載可能で、1 ブレードには最大 4 つのフラッシュ・デバイス(以降、DFM:DirectFlash モジュール)の搭載が可能です。FB//S は性能と容量のリニアなスケールアウトを重視するため、HW(ブレードのコンピュート部分、ブレード本数、DFM サイズと数)を柔軟に構成可能です。しかし、FB//E は容量(= GB 単価)を重視するため、HW 構成が以下のとおりに固定されています。
- シャーシ x 2 / x 3 / x 4 の 3 パターン
- シャーシあたりブレード x 10 構成のみ
- ブレードあたり 48.2 TB QLC DFM x 4 構成のみ
※ 2023 年 5 月時点の制限事項
上記のとおり、FB//E は、容量の密度を最優先にしています。容量密度を極めるほど GB 単価を下げることが可能になり、TCO 削減効果にも直結します。ESG(環境・社会・ガバナンス)をはじめとする環境問題への意識とプレッシャーの高まりはもちろんですが、最近では特に電気代の高騰に頭を悩ませるケースが多いように感じます。この HW 構成の固定と容量密度の追求のトレードオフとして最小構成は物理容量 3,856 TB(実効容量 2,634 TB)となりますが、その結果としてオールフラッシュでありながら GB 単価 0.20 ドルを実現しています。2,634 TB を僅か 4,200W / 12U で保存できます。
まとめと今後のビジョン
ブレードに搭載する DFM は、現時点でピュア・ストレージが提供する最大サイズである 48.2 TB QLC(デバイスあたり)を採用しています。一般的なエンタープライズ・ストレージに搭載可能な NL-SAS HDD は最大でも 16 TB(デバイスあたり)程度であり、ピュア・ストレージの QLC DFM はデバイス・レベルで既に 3 倍の密度を提供しています。この NL-SAS HDD vs PURE DFM の密度差は今後も広がっていきます。ピュア・ストレージは、DFM のサイズを毎年のように倍にしていくロードマップ(図 5)に自信を持っています。次回は、FB//E の性能や、FB//S と組み合わせたユースケースなどの詳細をご紹介したいと思います。
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