はじめに
ピュア・ストレージ・ジャパンは、お客様のデジタル変革を支援する取り組みの一環として、技術セミナー「The Orange Ring – Tech」を開催しています。本稿では、2019 年 10 月 18 日開催の第 7 回『ストレージ運用入門』から、ピュア・ストレージのモダンなアーキテクチャが、どのようにして従来のストレージ運用の悩みを解消するのか、わたくし鈴木が解説した内容を抜粋してご紹介します。
ストレージ運用者が担う 6 つのタスク
古くからストレージ運用は「煩雑で難しそう」とイメージされがちでしたが、まさにそのとおりです。ストレージ運用者が担う作業は多岐にわたり、大きく分けて 6 つのタスクがあります。
- サイジングや機器の選定
- 容量・性能の割り当て
- システムの稼働状況の監視
- 構成の変更
- データの保護
- データの移行
それぞれのタスクの詳細を見てみましょう。
1. サイジングや機器の選定
ストレージのサイジングや機器の選定は主にインフラの選定者が行いますが、ストレージ運用者も、運用面の容易性などの観点から選定に関わります。インフラ選定者とストレージ運用者はともに、各ストレージベンダーから収集した性能や機能、コストといった情報をもとに、業務やアプリケーションの要件に適した製品を選定します。
2. 容量・性能の割り当て
ストレージを導入すると、次に、業務やアプリケーションの要件にあわせて容量や性能を割り当てます。
3. システムの稼働状況の監視
運用を開始した後は、容量や性能の使用率、ハードウェアの稼働状況などを監視して、運用に問題が生じないよう管理します。
4. 構成の変更
監視を続ける中で、容量や性能の不足が判明することがあります。ハードウェアのリソースに余力があれば、不足している個所にボリュームを割り当て、余力がなければ、ディスクの追加やコントローラの交換を通じて、リソースの拡張・増強を行います。
5. データの保護
サーバーやアプリケーションの担当者と協議のうえで業務やアプリケーションごとにデータ保護要件を策定し、バックアップ環境の構築と運用を行います。適宜、ストレージ装置に実装されているスナップショットやレプリケーションといった機能を活用します。
6. データの移行
一般的には導入から 5 年でリプレースするケースが多く、リプレース時の機器の再選定や、データ移行計画の立案と実行を担うのもストレージ運用者のタスクになります。
これらのタスクは運用の枠組みとしていったん実装してしまえば日々の作業は軽減できるため、ストレージの運用はシンプルに見えるかもしれません。しかし実際には、作業に手間がかかったり、新しい課題が発生したりするものです。
では、ストレージ運用中にどのような課題が生じるのでしょうか。
従来型ストレージの運用における課題
従来型アーキテクチャの負の遺産とも言える一般的なストレージ運用における課題として、次の 5 つが挙げられます。
- 設計や構築に手間がかかる
- 構成変更が煩雑
- キャパシティプランが難しい
- データ保護の効率化
- 障害対応に時間がかかる
こうした課題は何十年も前に登場した従来型ストレージのアーキテクチャの複雑さに起因するところが大きく、未だに解消されない課題として存在しています。それぞれの課題を詳しく見ていきましょう。
1. 設計や構築に手間がかかる
性能設計のフェーズでは、次の作業を行います。
- 性能要件(IOPS、スループット、レイテンシー)を定義する
- 製品モデルごとの情報を確認しながら、ディスクの種類や本数、RAID 構成などを決め、サイジングを行う
例えば、旧来の技術で性能を重視する場合、ディスクを増やす必要があるため容量過多になり、コスト増につながります。ハイブリッド構成でも、ワークロードの特性を把握してサイジングをしないと性能不足になるケースがあります。従来型ストレージは、性能を決める構成要素が多く、設計が複雑になります。
構築フェーズでは、次のような事前作業を行います。
- 多様なパラメータを決定してパラメータシートを作成する
- 多くのマニュアルを確認しながら手順書を作成する
- SAN 環境であれば、サポートマトリクスの確認を行う(ホスト OS、マルチパスソフト、HBA、スイッチなど)
- 仮想化環境であれば、サーバーレイヤーとストレージレイヤーのパラメータの設定など、追加の作業を行う
この間にベンダーとの打ち合わせを繰り返し行うことも必要です。事前準備に時間がかかり、構築作業も数日以上かかります。状況次第で工数はどんどん増えていきます。
監視設定も必要です。
- システムの健全性や、ハードウェアリソースの状況を把握するための項目を設定する
- 統合監視ツールへの統合を行う(必要な場合)
ベンダーによって手法や項目が異なるため、リプレース時などには一から作り込むことになるでしょう。しきい値の設定も必要です。さらに、複雑なアーキテクチャを持つ従来型ストレージでは、コントローラ、ディスク、ネットワークなど、監視すべき項目が増えます。
2. 構成変更が煩雑
性能・容量不足への対応や、ソフトウェアのバージョンアップを行う際には、構成変更が必要になります。それぞれ次のような作業を伴います。
性能不足への対応
- 負荷状況や利用状況を調査する
- 高負荷状態が継続する場合は対応方法を検討する(コントローラの交換、ディスクの追加、フラッシュの活用など)
- サービスを停止するケースもある(ユーザー部門との協議が必要)
容量不足への対応
- 物理ディスク追加に伴いRAID の再設計を行う
- ボリュームの拡張や追加をベンダーに依頼する
ソフトウェアのバージョンアップへの対応
- 複雑なサポートマトリックスを再確認する(ホスト OS、マルチパスソフト、HBA、スイッチなど)
これらの作業を行うためには事前に確認すべき事項も多く、作業開始までに時間がかかり、作業コストが肥大化する要因にもなります。
3. キャパシティプランが難しい
従来型ストレージにおけるキャパシティプランは、次のような作業を伴います。
- 既存環境のアセスメントを行う
- 継続的に収集したステータス情報を確認する
- 傾向から将来を予測して最適な構成を検討する
- 必要に応じてベンダーに確認しながら、拡張計画に必要なデータを再取得する
リソースの使用状況を正確に把握したうえで将来を予測し、最適なプランを模索しなければなりません。
4. データ保護の効率化
従来型ストレージのデータ保護では、ディスク↔ディスク、ディスク↔テープ間のバックアップ/リストアが行われます。その際に、昨今のデータ量の大幅な増大が課題のひとつとなります。ある程度の規模ならストレージのデータ保護機能を活用するのが効率的です。しかし、従来型ストレージの提供するデータ保護機能では、次のような問題が生じるケースが少なくありません。
- ソフトウェアの仕様やハードウェア構成上の制限から高コストになる
- データ保護の要件にマッチする機能がない
- 遠隔バックアップでは、データ量が多いと帯域不足に陥る
5. 障害対応に時間がかかる
従来型ストレージの障害対応は長時間を要することが少なくありません。特にシステム全体で性能問題が起きた場合などは、サーバー、スイッチ、ストレージの各レイヤーでログを取得して分析する必要があります。迅速に調査が可能な環境でないと、調査を開始するまでに時間を要することもあります。
また、リアルタイムに状況確認ができない環境では根本原因の調査が難しく、障害が再発するリスクがあります。特に仮想化環境の場合は原因特定に時間がかかるため、ストレージのレイヤーでも原因追及に向けた初動を迅速に行える環境にしておく必要があります。
ピュア・ストレージのモダンなアーキテクチャでストレージ運用の課題を解決する
ピュア・ストレージのストレージは、従来型ストレージとは大きく異なり、こうした課題を解決するアーキテクチャを採用しています。
設計・構築が簡単
まず、ピュア・ストレージは、アーキテクチャが非常にシンプルなため、設計や構築が非常に簡単になります。オールフラッシュ構成に最適化された RAID 方式を採用し、I/O 制御(QoS)やデータ削除機能も共通化されているため、ディスクの選定や RAID 設計、ボリューム設計等は一切不要です。必要な性能や容量を満たすモデルを選択するだけでよいのです。
また、各種設定も簡単な GUI 操作でできるため、ユーザー部門からの容量割り当てなどの要求に素早く応えることが可能となり、運用を内製化しやすく、コスト削減にもつながります。
運用タスクの自動化が簡単
VMware vRealize Orchestrator のようなオーケストレーションツールとの連携可能なプラグイン等も提供しており、VMware 環境における運用タスクの自動化、効率化を容易に行うことができます。
構成変更が簡単―性能不足に容易に対応
性能不足に陥ったときのコントローラのスケールアップ作業やスケールアウト作業でも、従来のようなサービス停止やデータ移行は不要です。ピュア・ストレージは、いずれのモデルでも同じシャーシを利用しており、アクティブ―スタンバイで冗長化されています。そのため、オンラインのままで作業でき、性能が半減するようなこともありません。
コントローラをアップグレードするだけですから、スケールアウト型ストレージのように性能とともにラックスペースや消費電力が増大することもなく、ファシリティコストの最適化を図れます。
構成変更が簡単―容量不足に容易に対応
容量不足の対応も簡単です。オンラインの状態でシェルフを追加するだけで、RAID 設計などの作業は不要。サービスの性能への影響もありません。
構成変更が簡単―サポートマトリクスを容易に確認
またピュア・ストレージでは、業界標準の HBA や NIC、スイッチを全てサポートしているため、ソフトウェア・アップグレードに伴うサポートマトリックスの確認も容易です。
監視が簡単
ハードウェアのステータスや性能、容量の監視には、クラウド型管理ツール「Pure1」が無償で提供されています。監視の仕組みを標準化しやすいため、属人性を排することができ、作り込みの手間も軽減されます。
キャパシティプランが簡単
Pure1 は AI 技術を応用しており、将来的な容量や性能を予測する機能を実装しています。そのため、容易に精度の高いプランニングが可能となります。
データ保護の効率化
データ保護についても、さまざまな要件に対応すべく多様な機能を実装しています。完全同期レプリケーションを行う ActiveCluster、遠隔地への非同期レプリケーション(Replication)、クラウドストレージにバックアップする CloudSnap や他社製 NAS を活用する Snap to NFS などはその一例です。
業務やアプリケーションの RPO/RTO 要件に応じて最適な方式を選択できて、構築は容易です。ソフトウェアの追加やライセンス費用も不要です。また、ピュア・ストレージが得意とするデータ削減技術がデータをコンパクトにするため、効率的なデータ転送が可能です。
障害対応の時間を短縮
障害が発生した場合でも、調査に必要なログは全て Pure1 上に格納されているため、ログの解析や原因調査を迅速に行うことができます。
Pure1 ―クラウドベースの監視システム
ここで、クラウドベースの監視システム Pure1 の次の機能を簡単にご紹介します。
- Pure1 Planning
- Pure1 VM Analytics
Pure1 Planning が支援する将来予測と拡張計画
Pure1 Planning では、性能や容量の将来予測を行う機能に加えて、コントローラのアップグレードや容量増設を行ったときの変化をシミュレートする機能も実装されており、拡張計画に役立ちます。
Pure1 VM Analytics が仮想化環境の問題解決をサポート
Pure1 VM Analytics は、VMware 仮想化環境の各レイヤーの性能状況をフルスタックで可視化し、問題の切り分けを強力にサポートします。
おわりに
ピュア・ストレージは、モダンなアーキテクチャで煩雑なストレージ運用の課題を解決します。また、クラウドを利用することにより、さらにシンプルなストレージ運用を可能にします。
The Orange Ring – Tech の今後の開催スケジュールはただいま調整中です。決定しだい、本ブログ、ピュア・ストレージの Web サイトおよび Facebook ページでご案内いたします。
The Orange Ring – Tech ブログシリーズ
第 1 回 新しいストレージのカタチ ─ 高速堅牢なオールフラッシュをクラウドライクに利用する
第 2 回 イマドキのストレージ設計 ─ 容量・性能はどう決める?
第 3 回 データ保護の最後の砦 ー バックアップの考え方
第 4 回 目標は簡素、実効は複雑なストレージマイグレーション
第 5 回 NVMe を最大限に活かすストレージ・ネットワーキングとは
第 6 回 AI/ビッグデータをビジネスに活かすには ─ 統合ストレージの重要性
Pure Storage、Pure Storage のロゴ、およびその他全ての Pure Storage のマーク、製品名、サービス名は、米国およびその他の国における Pure Storage, Inc. の商標または登録商標です。その他記載の会社名、製品名は、各社の商標または登録商標です。