はじめに
ピュア・ストレージ・ジャパンは、お客様のデジタル変革を支援する取り組みの一環として、技術セミナー「The Orange Ring – Tech」を開催しています。本稿では、2019 年 9 月 25 日開催の第 4 回『ストレージマイグレーション手法~データ移行手法と課題~』から、ストレージ装置の更改にともなうデータ移行のさまざまな課題や懸念に対するストレージ移行のポイントや移行計画を簡素化する「Purity//Migrate」機能について、わたくし堀口が行った解説の内容を抜粋してご紹介します。
定期的なストレージ更改は大きな負担
企業のストレージ環境は、サイロ化や複雑化、運用コストの肥大化など、多様な課題を抱えています。3 ~ 5 年で繰り返されるオンプレミスストレージのマイグレーションも大きな課題です。数百 GB ~ 数 TB 程度であればともかく、数十 TB ~ 数百 TB クラスになるとサービスへの影響を考慮しないわけにはいきません。ひとくちに「新しい製品に載せ替える」と言っても大がかりな作業になってしまい、調達費や人件費など膨大なコストが生じます。
ピュア・ストレージのストレージデバイスは、2012 年の登場当初から無停止でのアップグレード、データ移行作業が不要という点が特長でした。ソフトウェアバージョンアップも保守の範疇で、新しい機能も追加ライセンス不要で利用できます。
したがって、ピュア・ストレージを選ぶだけでも、上記の課題を解消することができます。とは言え、他社ストレージからマイグレーションを行うときには、いくつかの注意点があります。
ストレージ装置を更改する場合、データ移行はアプリケーション / OS、仮想化基盤、ストレージのいずれかのレイヤーで実施する必要があります。
仮想化基盤であれば、VMware の Storage vMotion や Hyper-V の Live Migration などの機能を用いることで、ストレージ間のデータ移行を容易に実行できます。ベアメタル環境、あるいは仮想化環境のバージョン違いでライブマイグレーション機能が対応できないケースであれば、アプリケーション / OS レイヤーあるいはストレージレイヤーでのデータマイグレーションが必要です。
環境によって異なる移行手法
マイグレーションの手法は、大きく 3 つに分類できます。上述したように、最大のポイントは既存のサービスへの影響を最小限にとどめること、サービスを止めずにデータを移行し、切り替えるという点にあります。
- ブロックレベル
- ハードウェア機能
- ソフトウェア(仮想ストレージソフトウェア)機能
- ファイルレベル
- OS コピー機能(xcopy、rsync、robocopy など)
- ボリュームマネージャ機能
- アプリケーション / クラスタリングソフトウェアレベル
- アプリケーションのデータコピー / ミラーリング機能
- Storage vMotion / Live Migration
仮想サーバー環境
仮想サーバー環境で、Storage vMotion / Live Migration を利用できるのであれば、作業は比較的容易です。異なるストレージベンダーや機種であっても、データ移行が可能というメリットがあります。
仮想ストレージ環境
物理環境や仮想化環境からストレージを共有したり、マルチベンダー環境を維持したりするため、仮想ストレージ装置を利用しているケースがあります。この場合、新しいストレージを配下に構成することで、オンラインのままデータ移行が可能です。
アプリケーション / OS
物理環境の場合、アプリケーションや OS によってはボリュームをミラーリングし、オンラインのままデータを移行してサービス停止期間を最小限にとどめる機能を持つものがあります。ただし、多数のサーバーを運用している場合には、長期間かかってしまいます。
ストレージ装置間
ストレージ機能でデータのレプリケーション / ミラーリングを実施する手法もあります。ただし、同一ベンダーの製品に限られるケースが大半で、サービス継続については機能に依存することになりますが、作業負荷は最小限です。
バックアップ / マイグレーションソフトウェア
バックアップソフトウェアのリストア機能を応用して、データ移行を行う手法もあります。アプリケーションを移行先へフェイルオーバーする機能やリストアする機能など、サービスへの影響を小さくするマイグレーション機能を持つツールも利用できます。
いずれの手法でも、新しい環境へデータを移行して既存のサービスを稼働できれば作業は完了ですが、移行プロジェクト全体としては氷山の一角に過ぎません。実際には、事前の調査や依存関係の確認、デバイスの PoC、運用プロセスの統合、課題整理、サイジングや設計、関係各所の調整とスケジューリング、プロジェクトの管理とモニタリング、人的ミスの軽減、移行後のツールの削除など、さまざまな作業を経る必要があります。
仮想ストレージ装置による移行はデメリットも大きい
上述したデータ移行手法には、それぞれにメリットとデメリットがあります。オンラインでの移行、サービスへの影響、作業の難易度などに鑑みると、仮想サーバー / 仮想ストレージの方式が望ましいと考えられます。
例えば、仮想ストレージ装置を利用する手法は、オンラインで高速にデータを移行できるため、データ量が膨大なケースに適しています。仮想ストレージ装置は、ストレージのボリュームに独自の仮想ヘッダを追加して、サーバーへ仮想ボリュームとして提供するものです。そのため、マルチベンダーであっても容易にストレージを統合し、ボリュームをミラーリングすることが可能です。
ただし、既存環境に仮想ストレージ装置がない場合には、新たにデバイスを追加するため計画停止が必要ですし、移行コストが増大する恐れもあります。
また、ストレージを移行したのちに仮想ストレージ装置を取り除く作業は困難です。FC スイッチの結線とゾーニングを変更し、既存の仮想ボリュームから新しいストレージのボリュームへアクセスを切り替える必要があるため、長時間の計画停止を伴います。また新しいストレージが、サーバー OS のマルチパスドライバに対応しているかどうかにも注意する必要があります。
ストレージ仮想化技術で移行を強力にサポート
仮想ストレージ装置を活用すれば、物理環境やバージョンの異なる仮想化基盤への移行、膨大なデータの移行は容易になりますが、別途デバイスを追加したり、作業後に取り除いたりする作業は困難です。
そこで、ストレージ仮想化技術を活用してストレージ移行を容易にするための機能として登場したのが、ピュア・ストレージの Purity//Migrate です。 FlashArray のコントローラ上で稼働するソフトウェアのため、対応するモデルとライセンスであれば、追加費用などは不要です。
FlashArray は無停止で導入できますし、Purity//Migrate で集中的に管理しながら、バックグラウンドでデータ移行を実施できます。最終的な差分の同期はワンクリックで実施でき、サービス停止も I /O 切り替えのみの短時間で済みます。ライブマイグレーションを利用できない環境で、移行計画を簡略化できるソリューションです。
Purity//Migrate によるデータ移行は、マルチパスドライバ / ソフトウェアの変更は必要なく、OS の再起動も不要です。FC スイッチのゾーニングを切り替える必要もありません。LUN のマスキングも既存のまま利用できます。移行中は、FC 環境にバーチャルな仮想ストレージ装置である Purity//Migrate Server がインサートされますが、作業完了後は撤去することも可能です。
Purity//Migrate は、ピュア・ストレージの APP Catalog からインストールして利用できます。ウィザードを用いて Purity//Migrate Server のインサーションを実施すれば、SAN 構成を変更することなく、既存ストレージへのアクセスが FlashArray を介して行われるようになります。このため、既存ストレージへの I/O を継続しつつ、FlashArray へのバックグランド同期が可能になるというわけです。
ピュア・ストレージのサービスで移行計画をスムーズに
ピュア・ストレージの Evergreen Storage は、既存のフォークリフトアップグレードを解消することが可能な永年保証のプログラムです。マイグレーションは不要で、保守メンテナンスの範囲でディスク、コントローラ、ソフトウェアなどの各種パーツを最新の状態へ交換できます。一律の保守料金で、コントローラを 3 年ごとに無償アップグレードできます。
上述した Purity//Migrate を利用するには、ピュア・ストレージのプロフェッショナル・サービスを受ける必要がありますが、さまざまなメリットがあるためオススメです。
データ移行についても、プロジェクトの開始から完了までの細やかな計画やアプローチの立案とカスタマイズ、ベストプラクティスの提案や知的財産の保護、自動化や標準化、統合管理手法に至るまで、さまざまな知見と資料を提供します。Purity//Migrate を利用しない移行作業を含めて、最適な手法を提案し、実行をサポートします。ぜひお気軽にご相談ください。
The Orange Ring – Tech の開催スケジュールと参加お申込みについては、こちらをご覧ください。
The Orange Ring – Tech ブログシリーズ
第 1 回 新しいストレージのカタチ ─ 高速堅牢なオールフラッシュをクラウドライクに利用する
第 2 回 イマドキのストレージ設計 ─ 容量・性能はどう決める?
第 3 回 データ保護の最後の砦 ー バックアップの考え方
Pure Storage、Pure Storage のロゴ、およびその他全ての Pure Storage のマーク、製品名、サービス名は、米国およびその他の国における Pure Storage, Inc. の商標または登録商標です。その他記載の会社名、製品名は、各社の商標または登録商標です。